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消えゆく職業、これから消える職業を見たら、公教育は時代の要請からかけ離れすぎていた


これから消える職業を見たら、公教育は時代の要請からかけ離れすぎていました。
「前例のない課題」を解決する能力が必要とされている現代で、公教育は変わってきたのでしょうか。今回は、公教育と職業についてみていきたいと思います。

目次


  • ここ15年で増えた職業、なくなった職業は?
  • これからなくなる職業、生き残る職業は?
  • これから残る職業と、これからなくなる職業の違い
  • 日本の教育は申し分ないほど「前例ある状況=正解がある状況」で素早く答えを見出す能力を築き上げた
  • 企業需要と教育供給のギャップ
  • 「前例なき課題」に対して協力して挑む姿勢は、公教育では手に入らない





ここ15年で増えた職業、なくなった職業は?



ここ15年で、増えた職業はなんでしょうか。
東洋経済によると
増えた仕事」1位は介護職員。15年間で約100万人増えたが、それでも人手不足が深刻化するほど、高齢化で市場が急成長している。その他、看護師や訪問介護従事者、看護助手などの伸びも目立つ。
販売店員も51万人増加。清掃従事者や調理人などのサービス業も、就業人口の増加傾向が見られる。共働きの増加の影響か、保育士も16万人増加している。また製造業の中でも、日本勢が強さを保つ自動車の組立従事者は増加。内需が底堅い食料品も製造従事者が増えている。

そうです。

一方で減った職業はなんでしょうか。東洋経済によると、

ほかに減少幅の大きさで目立ったのは、会計事務従事者。15年間で100万人以上が減少した。
(中略)会計事務従事者の減少の背景にも、会計ソフトウェアの普及などテクノロジーの発展がありそうだ

さらに印刷・製本従事者も16万人減少。印刷業界は市場規模がピークの1991年には8.9兆円だったが、2013年には5.5兆円にまで縮小している。
原稿の文字入力、写真の色分解など、かつて印刷会社の作業員が手掛けていた仕事は、コンピュータに取って替わられて久しい。さらにデジタル化によって出版印刷物そのものの減少が続いていることで、同業界の仕事の縮小に拍車をかけた

なるほど。以前、企業の給料清算の際に、電卓をはじいて計算する仕事があったと聞いたことがありますが、いまは業務用給料清算ソフトなどのおかげで、その仕事がなくなったと聞いたことがあります。

これからなくなる職業、生き残る職業は?

さて、これからなくなる職業はなんでしょうか。野村総研とオックスフォード大学で「これからなくなる職業」について研究した、オズボーン教授との共同研究によると

試算*3は、労働政策研究・研修機構が2012年に公表した「職務構造に関する研究」で分類している、日本国内の601の職業に関する定量分析データを用いて、オズボーン准教授が米国および英国を対象に実施した分析と同様の手法で行い、その結果をNRIがまとめました。それによると、日本の労働人口の約49%が、技術的には人工知能やロボット等により代替できるようになる可能性が高いと推計されました(図1)。(代替可能性の高い職種、代替可能性の低い職種の一部を【ご参考】で紹介しています。)
この研究結果において、芸術、歴史学・考古学、哲学・神学など抽象的な概念を整理・創出するための知識が要求される職業、他者との協調や、他者の理解、説得、ネゴシエーション、サービス志向性が求められる職業は、人工知能等での代替は難しい傾向があります。一方、必ずしも特別の知識・スキルが求められない職業に加え、データの分析や秩序的・体系的操作が求められる職業については、人工知能等で代替できる可能性が高い傾向が確認できました。



とあります。

同ページには、具体的に消える職業についての記述がありました。いわく、

一般事務員・受付係・学校事務員・給食調理人・銀行窓口係・警備員・建設作業員・出荷・発送係員・新聞配達員・スーパー店員・データ入力係・電車運転士


などがありました。(上の画像が見にくかったら、参考リンクをひらいてみてください)

確かに。実際Amazonはドローンによる配達をイギリスでテストしていますから、配達員の雇用もなくなりそうですね。また、倉庫にロボットを配置して、1000億円の人件費を削減しようとしています。
(詳しくは、参考リンクを見てみてください)人件費がなくなることは、雇用がなくなることとほぼ等しいです。

一方で、残る仕事はどうでしょうか。

アートディレクター・アナウンサー・音楽教室講師・経営コンサルタント・作詞家・作曲家・社会学研究者・中学校教員・保育士・ミュージシャン

などでした。

これから残る職業と、これからなくなる職業の違い


では、これから残る職業と、これからなくなる職業の違いはなんでしょうか。
まず、先ほどの
抽象的な概念を整理・創出するための知識が要求される職業、他者との協調や、他者の理解、説得、ネゴシエーション、サービス志向性が求められる職業
がありました。


また、アンソニー・ゴールドブルーム氏は"The Job we'll lose to machines - and the ones we won't" (機械に代替される仕事と、我々がする仕事について)というプレゼンテーションの中で、このように言っています。

 我々に出来て 機械に出来ないことがあります 機械の技術が ほとんど進歩していないのは 経験のない状況で 判断する技術です。機械は前にほとんど見たことがない状況を うまく処理できないのです。 機械学習に根本的な限界があるのは大量の過去データから 学ぶ必要があるという点です 人間は違います。我々は ほとんど共通点のない手掛かりを繋ぎ合わせ 見たことのない問題を 解決することができます。
(中略)経験のない状況においては 機械は人間には勝てず それが人間の行うことを 機械で自動化する際の基本的な限界を与えます
(中略)これが将来の仕事に 意味することは何でしょう?各々の仕事の未来の運命は ある1つの問への答えにかかっています 高頻度多量データ処理に還元できる部分がどの程度あり、前例無き状況への対応を求められる部分が どの程度あるのか? 高頻度多量データ処理については機械はどんどん賢くなっていきます 今では 機械が小論文の採点をし、ある種の病気の診断をします 数年内には、監査をしたり 法律上の契約書から一般的な表現を 解釈出来るようになるでしょう。それでも会計士や弁護士がいらなくはなりません。複雑な税務対策や 前例のない訴訟の対応には 必要とされるのです。機械により 能力のある者だけが残され これらの職に就くことは 難しくなります。 
引用)The jobs we'll lose to machines - and the ones we won't 



人間は機械と違って、ほとんど共通点のない手掛かりを繋ぎ合わせ 見たことのない問題を解決することができるようです。これから残る仕事を見抜くためには、「前例なき状況への対応を求められる部分がどの程度あるのか」が重要みたいです。

では、さきほどの消える職業を見てみましょう。
一般事務員・受付係・学校事務員・給食調理人・銀行窓口係・警備員・建設作業員・出荷・発送係員・新聞配達員・スーパー店員・データ入力係・電車運転士

たしかに。事務員の仕事って、ルーティンなイメージが多いですよね。新聞配達員の仕事も、明日いきなり配達方法が大きく変わることはないですね。かならず正解があるわけで。


では、残る職業はどうでしょうか。

アートディレクター・アナウンサー・音楽教室講師・経営コンサルタント・作詞家・作曲家・社会学研究者・中学校教員・保育士・ミュージシャン

確かに。アナウンサーはかなりアドリブが必要とされるでしょうし、経営コンサルタントは企業が解決できない正解のない課題を、仮説を立てながら解決していく職業ですね。「前例なき状況」がどの職業にも存在します。

市場にとって、「前例なき状況」に対しての適応能力はそこまで必要とされなかった

教育に目を当ててみましょう。
今までの教育は、「前例なき状況」に対しての適応力を身に着けさせるようなカリキュラムだったでしょうか?


否です。


そもそも、今までの教育制度は「前例なき状況」への適応能力を身につけさせなくても、労働市場の需要と供給がマッチしていたので、そこまで問題がありませんでした。

正解がわかっていて、その最適解を早く見出すような仕事で、国は発展することができたのです。
だからルーティーンを回し続けるような仕事でも十分だったわけですね。

日本の教育は申し分ないほど「前例ある状況=正解がある状況」で素早く答えを見出す能力を築き上げた



そして、そのような「前例がある状況」の中で、よいパフォーマンスを発揮するという能力を形成する場として、日本は申し分のないほど優れた教育制度でした。

日本の公教育は、当時のほかの先進国と比べて、非常に平等主義なカリキュラムで、学力の格差が非常に小さかったのです。

そして、大学入試という正解のある試験に素早く回答し合格することが、「正解のある答えを素早く処理して見つけ出す」という能力の担保になり、それがそのまま職業能力として扱われていた(職業訓練説)のです。

企業需要と教育供給のギャップ

ところが、いま現在の市場はどうでしょうか。経団連によると、求めている能力はコミュニケーション能力・主体性、チャレンジ精神、協調性、誠実性になっています。

選考時に重視する要素は 12 年連続で「コミュニケーション能力」が第1位
企業が選考にあたって重視した点を 25 項目から5つ回答する設問では、「コミュ
ニケーション能力」が 12 年連続で第1位となった。「主体性」、「チャレンジ精神」、
「協調性」、「誠実性」を含めた、上位5項目に順位の変動はなかった。
そして、求めなくなっているのは、学業成績です。
(2) 選考にあたって「学業成績を重視した」企業の割合が減少
学業成績について、「かなり重視した」または「やや重視した」と回答した企業の
割合は 44.6%となり、2014 年入社の場合と比べて 7.1 ポイント減少した一方、「ど
ちらとも言えない」が 7.8 ポイント増加(27.9%)となった
引用)2015 年度 新卒採用に関するアンケート調査結果の概要 経団連

また、厚生労働省によると、
○ 大学卒、大学院卒ともに、2004年調査以降 「熱意・意欲」 が常に 1 位となっている。

○ 遅くとも2008年調査には、大学卒、大学院卒ともに、「熱意・意欲」、「行動力・実行力」、「協調性等」が上位 3 位に入っており、1999年調査では大学卒、大学院卒ともに 3 位以内にランクインしていた「論理的思考力」、 「専門知識・研究内容」といった、学業に比較的関連性の強い素養・能力の順位が低下している。


だそうです。


引用)労働市場における人材確保・育成の変化 2012 厚生労働省


つまり、企業としてはコミュニケーション能力、主体性、協調性、チャレンジ精神、協調性を求めています。一方、学業成績、またそれに呼応する論理的思考能力、専門知識に対する評価は下がってきているわけです

求められている能力は、「前例なき課題」に対して協力して挑む姿勢(協調性、コミュニケーション能力)を必要としているみたいですね。


東京大学教授の本田由紀氏は言います。

メリトクラシーという言葉は、業績主義とか能力主義とか訳される。私の専門としている教育社会学の中ではずっと前からある言葉。そのメリトクラシーはIQ+努力という形で定式化されてきた。イメージとしては受験学力みたいな頭のよさ、いろいろな記号、文字や数字をルールに従ってうまく操れる知的な能力をいう。
これに対して1990年代以降の日本では人間力、生きる力、あるいはコミュニケーション力、さらには独創性、熱意、愛嬌という具合に、勉強すれば身に付くものではない、人物の全体に及ぶような、性格や人格と切り離せないことが評価されるようになってきた。
引用) “超”能力主義が日本社会を覆う 東洋経済 


「前例なき課題」に対して協力して挑む姿勢は、公教育では手に入らない


さて、このように企業が必要とする能力は、「前例のある最適解が用意された課題」を素早く処理する能力を鍛える学校では手に入りにくいです。

「前例なき課題」に対して協力して挑む姿勢(協調性、コミュニケーション能力)はどこで手に入れるのでしょうか。



家庭環境です。



以前、教育社会学者の刈谷剛彦さんの著書の中で、
小学生に対して「総合の学習の時間でリーダーシップをとるか」というアンケートを取っていました。
その結果、親の所得階層、学歴によって答えが違ったのです。

総合の学習の時間にまとめ役になるかどうか」を階層ごとに集計した結果、どうも階層上位ほどよくあてはまると回答していたようです。生まれが学力のみならず、学校の中でのリーダーシップにも影響がでてきてしまうという事実に非常に興味をもちました。

階層上位のほど、リーダーシップがあるということです。
というか、そのようなリーダーシップ能力は、学校では身につかず、生まれによってきまってしまっているのです。

公教育をボトムアップしないと、労働市場に「前例のない課題」を解決できる人材が送り出せない


これから何が起こるでしょうか。

僕の予想でしかないですが、今までそこまで賃金が高くなかった、「前例のある最適解が用意された課題を素早く処理する能力」が必要とされるような仕事は機械に置き換わり、「前例なき課題」に対して協力して挑む姿勢(協調性、コミュニケーション能力)を持つ高所得層の人が生き残る

と思います。


これは厚生労働省の所得分布です。このヒストグラムについて、こう説明しています。
所得金額階級別に相対度数分布をみると、「200~300万円未満」が 13.9%、「300~400万円未満」が 13.3%と多くなっている。
中央値は 427万円であり、平均所得金額(547万5千円)以下の割合は 61.3%
となっている。(図8)



所得のヒストグラムは左に傾いています。つまり、人口の大部分の単純労働をしていた人が、機械に置き換わるのではないでしょうか。

仮に100%高収入な人が「前例のない課題」に取り組む仕事についているとします。
さきほどの野村総研とオックスフォードのレポートでは、人口の49%が機械に置き換わられるみたいです。所得分布で見ると、年収400万円以下の人は約49%未満にあたるので、丸ごと機械に置き換わるイメージです。

今、急ピッチで教育改革が行われています。大学入試も、グループディスカッションなどが求められるようになるのも時間の問題です。

ただし、試験が家庭環境によって影響を受けやすくなることが懸念されます。
ゴールを現代に合わせるのは素晴らしいです。プラスで、そのような「前例なき課題」に対して協力して挑む姿勢(協調性、コミュニケーション能力)を身につけさせられるような、公教育の強化が必須です。

今は私立、国立、公立によってそのような能力が得られる教育には多大な格差があります。
まずは、そのような能力を持っている人の教員養成が先決だと思われます。


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