『サイコパス(中野信子)』 読んでみました。

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サイコパス読んでみました。


サイコパスって、普段日常会話で「あのひとサイコパスっぽいよね~」と話すことはあるんですけど、実際にどういう特徴があるのかだったり、学術的な議論がどうなっているの気になっていました。

そこで、脳科学者中野信子さんの『サイコパス』という文庫を読んでみました。中野さんのプロフィールはこちら。

1998年東京大学工学部応用化学科卒業後、東京大学大学院工学系研究科修士課程、2004年東京大学大学院医学系研究科医科学専攻修士課程修了、2008年東京大学大学院医学系研究科脳神経医学専攻博士課程修了。博士論文「高次聴覚認知における知覚的範疇化の神経機構 fMRI・TMSによる複合的検討」で医学博士号取得[1]。
2008年から2010年まで、フランス国立研究所ニューロスピン(NeuroSpin。高磁場MRI研究センター)に博士研究員として勤務。2013年から東日本国際大学客員教授。


心理学、脳科学、社会学等さまざまな視点からサイコパスを見ていて面白かった!Kindleで800円でした。(画像を押すとアマゾンの書評ページに飛びます。)




アマゾンの紹介文だと

平気でウソをつき、罪悪感ゼロ……そんな「あの人」の脳には秘密があった!
外見はクールで魅力的。会話やプレゼンテーションも抜群に面白い。
しかし、じつはトンでもないウソつきである。不正や捏造が露見しても、
まったく恥じることなく平然としている。
ときには、あたかも自分が被害者であるかのようにふるまう。
残虐な殺人や善良な人を陥れる犯罪を冷静沈着に遂行する。
他人を利用することに長け、人の痛みなどこれっぽっちも感じない。
――昨今、こうした人物が世間を騒がせています。しかも、この種の人々を
擁護する人も少なくありません。そうした人物は高い確率で「サイコパス」なのです。

もともと「サイコパス」とは連続殺人鬼などの反社会的な人格を説明するために
開発された診断上の概念です。しかし精神医学ではいまだ明確なカテゴリーに
分類されておらず、誤ったイメージやぼんやりとした印象が流布していました。
ところが近年、脳科学の劇的な進歩により、サイコパスの正体が徐々に明らかになっています。
脳内の器質のうち、他者に対する共感性や「痛み」を認識する部分の働きが、
一般人とサイコパスとされる人々では大きく違うことがわかってきたのです。
しかも、サイコパスとは必ずしも冷酷で残虐な犯罪者ばかりではないのです。
大企業のCEO、政治家、弁護士、外科医など、大胆な決断をしなければならない職業の人に
サイコパシー傾向の高い人が多いという研究結果もあります。
こんな感じに紹介してありました。

実際に読んでみて、興味深かった内容、考えさせられた内容を要約しつつ、感想をまとめておきます。



サイコパスは相手の感情が理解できないわけではない


サイコパスは、むしろ相手の感情を的確につかむことができるんです。ただ、相手の気持ちに共感することができないみたいです。つまり、相手がつらくて助けてほしいという感情を理解することはできるけど、だからと言ってかわいそうだから自分を犠牲にしてまで何かをするとか、そういうことはしないみたいです。

ある実験で、一般人とサイコパスを分けて、グロテスクな画像を見せたときに、一般人は発汗したけど、サイコパスだと発汗しなかったという報告があるそうで、どうもそういった「共感感覚」に異常があるみたいです。

サイコパスは恐怖を感じないからこそ、合理的でルールハックな選択ができる

「村に敵が入ってきて、見つからないようにみんなで隠れている。だけど赤ん坊が泣きだしている。あなたならどうする?」という質問に、普通だったら「なんとか泣かないように工夫する」と答えますが、サイコパスだと即決で「絞め殺す」という判断ができるみたいです。確かに、なんとか泣かないように工夫するという選択肢は、全員が殺される可能性があり、リスキーですよね。ただ、普通の人であれば、そのような合理的な判断はできないです。

このリスクに対する不安のなさや、共感のなさこそが、実は経営者層や外科医、政治家にサイコパスが多い所以だそうです。また、恐怖を感じないため、ハイリスク、ハイリターンを好むのもサイコパスの特徴だそうです。

サイコパスと疑われる偉人


サイコパスは近年見出された新しい概念なので、過去にサイコパスかもしれない人を診断できませんが、歴史上の人物にサイコパスと疑われる人は多いみたいです。織田信長、毛沢東、ピョートル大帝、あと以外にマザーテレサもサイコパス疑惑があるみたいです。


サイコパスは遺伝か環境か

社会学を学ぶ僕にとって、一番興味がある内容はここでした。遺伝か、環境か。社会学だと基本環境になるんです。

結論から言うと、著者自身は遺伝派だけど、「遺伝要因と環境要因が複雑に入り混じってサイコパスは生まれてくるが、環境を整えることで、サイコパス特性を抑えることは可能である」というのが最近の潮流みたいです。

実際、脳の一部の機能不全が、サイコパスを生むというのは、すでに様々な脳科学の研究で実証されているみたいです。詳しくは買ってみて読んでください。

ただ、以前の記事で紹介した、ペリー幼稚園プロジェクトのように、教育的な介入が犯罪率を低下させるという研究もあります。

「遺伝的な影響はもちろんあるが、それが誘発されるかどうかは環境次第である」という見方になりますね。

ただ、どのような要因がサイコパスを発生させるかは、複数の要因が重なりあって出てくるので、人体実験をしないとできず、倫理的な限界がありなかなか証明することが難しいみたいです。

サイコパスはなぜ魅力的なのか

「もてるタイプの男性は、二種類に分けられます。一つは子育てにリソースを割いてくれそうな人。もう一つは、真逆のサイコパスの特徴を持っている人です。ダークトライアドと呼ばれる、サイコパスマキャベリストナルシストの3要素を備えた男性は外見上魅力があり、女性によく持てるという結果が出ています。」
これは参考になりますな。「浮気する人とは絶対付き合えない」といいながら、選んでいるのはやり手の男子と付き合っている人結構知り合いでおります。

あと、「結婚するなら理系、遊ぶなら文系」とかいうアンケートを最近見ましたが、なるほど、そういうことなのねえと思いました。理系のほうが年収高そうだし(=養育コスト払えそうだし)、文系のほうが遊んでそうだし。

結婚するなら安定している人、付き合うならドキドキ感をくれる人ってことなんでしょうか。

ダークトライアドは調べたら面白かったです。

サイコパスは人類には必要な存在だった

環境に適した種だけが、生き残れるという進化論の視点にたてば、100人に1人と割と存在するサイコパスは、人類に必要な存在であったと考えることができます。

「リスクに直面しても恐怖を感じない人間、共感性の低い人間、平気でうそをつける人間は様々な状況の中で必要とされます。」

まさにこの文章を見て思い浮かんだのは、スティーブジョブズでした。本著の中にもサイコパスの例として出てきていますが、平気でうそをつきますし、圧倒的なリスクの中でも恐怖を感じず、従業員に関しても共感性もないですが、彼が死んでもな世界中で大ヒットしているiPhoneは、人類に必要な存在だったのでしょうか。

サイコパスに罰は通用しないから、別の枠組みが必要


これも言われて確かにと思ったのですが、ハイリスク、ハイリターンを好み、共感性の低い人に、殺人したら死刑と脅しても、リスク計算できないから意味ないなと。

だからもっとサイコパスが生きやすく、害を与えないような枠組みを作るべきだ!というのは非常に面白いアイディアだと思います。

感想

非常に面白かったので、ぜひ読んでみてください!
ちなみに、遺伝と環境という議論では、僕の専門である教育でもいえることです。
前回ご紹介した、ペリー幼稚園プロジェクトに関する記事もおすすめなのでぜひご覧ください。

【幼児教育の質で成人後の年収差が○○万円?】 幼児教育の実証研究「ペリー幼稚園プロジェクト」についてまとめてみた

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