目次
- ICUの受験対策はどうすればいいの?受験科目から、おすすめの受験対策方法をまとめてみた
- 【ICU生の特徴は?】現役ICU生100人に徹底調査した記事まとめ
- 【ICU生に聞いた】受験時の志望動機と現状について①
- 【ICU生に聞いた】受験時の志望動機と現状について② 調査結果
- 【ICU生に聞いた】受験時の志望動機と現状について③ まとめ編
- ICUの偏差値は高いの?ICU生の偏差値と、ICU生が受験した大学の合否を調べてみた
- 【ICU生264人に聞いた】ICU生の出身高校はどの都道府県にあるのか
- ICUの学費とICU生の通っていた小学校、中学校、高校を見たら、お金持ちばかりだった話 ← この記事
- ICUの就職はいいの?過去3年間のデータをもとに、評判・年収・業界・就職先を調べてみた
問題意識
ここ最近、友人が言っていて、気になっていたことがあった。
「ICUはお金持ちの息子、娘ばかりで、田舎出身の荒れた公立中学校のことなんて知らないだろう。きっと金持ちの子どもばっかりが来ているんだ。」と。
確かに!その可能性はある!と思って、それならまず金持ちしか入れないICUとはどんな学校やと調べてみた。
まず、学生数はかなり少ない。各学年、600人前後である。(2012年だけなぜか多いが)
全学年で2613人と、大学としてはかなり小規模だ。
ちなみに、男女比は約1:2で、入学前は「彼女が2人できる計算だ」とはしゃいでいたが、キモオタになってしまったのはどこから間違えてしまったのだろうか。
次に学費はなんぼかと調べてみた。まず、ICUは「学費の森」と呼ばれているほど(自分が勝手に呼んでいるだけだけど)、学費が高額である。
ICUのホームページを参照して集計した結果、4年間卒業するために、授業料、施設費、入学金等合計で大体600万円かかるのである。これに、教材費、寮費などを合わせると、もっと高額ははずだ。
ちなみに、早稲田国際教養は同じように、約600万円の学費がかかるようだ。
相対的にどれくらい高いかは比較対象を探すのが面倒なので割愛するが、確かに、学費はかなり高い。そして、その大学に入れられるということはかなり裕福な家庭の出身者が多いのではないのかと考えられる。
だが、僕がさらに興味を持ったのはこの発言の帰結として、
「それゆえ、ICUに入る人は所得の高いエリート階層の人ばかりである」ということが考えられることだ。
なんだか自分の専門の教育社会学の主要なテーマである、階層の再生産論に近いものを感じるなと思い、気になってしまった。
教育社会学では、階層の再生産理論をいかのように説明している。
教育社会学では、学校の役割を正当化、選抜・配分、社会化の3つの機能があるとしている。
教育社会学では、学校の役割を正当化、選抜・配分、社会化の3つの機能があるとしている。
まず、かつての、生まれがすべての地位を決定する貴族政治(アリストクラシー)から、国民国家の成立と同時に近代学校制度を導入することによって、すべての国民がその階級に関係なく平等に教育を受けられるという、機会の平等を保証することができるようになった。その結果、かつての江戸時代のような士農工商のような世襲制の属性的地位から、近代学校制度を導入することによって、その学校という選抜機関の中で、各々が持つ能力と、
それを伸ばす努力をすることによって、後天的に身に着けた個人の社会的メリット(業績的地位)に応じて選抜され、特定の階層に配分されていくという、平等な仕組みが出来上がった。
それを伸ばす努力をすることによって、後天的に身に着けた個人の社会的メリット(業績的地位)に応じて選抜され、特定の階層に配分されていくという、平等な仕組みが出来上がった。
この、メリットによる選抜機構を持つ社会を、社会学者マイケル・ヤングは「メリトクラシー」と呼んだ。
一方で、このメリトクラシー社会は実際には、努力や能力どうこうよりも、生まれ持った環境に大きく左右されるという批判がある。
たとえば、お茶の水大学の耳塚教授によると、都心部の通塾家庭と、都心部の非通塾家庭を比較した際に、算数の平均点が通塾グループのほうがはるかに高かったという研究や、武蔵野大学講師舞田氏のブログ『データえっせい』によると、東大生の家庭の年収は、50%以上が1000万円以上だということを明らかにしている。
お茶の水大学耳塚教授の記事
http://berd.benesse.jp/berd/center/open/berd/backnumber/2007_08/fea_mimizuka_01.html
武蔵野大学講師舞田敏彦先生のブログ『データえっせい』より
http://tmaita77.blogspot.jp/2015/02/blog-post_2.html
フィリップ・ブラウン氏によると、事実、メリトクラシー社会はあくまでも建前であって、多くの国々は、真のメリトクラシー社会ではなく、親の所得と教育期待によって地位が決まるというペアレントクラシー社会だというのだ。
これは、実は日本だけでなく、世界中で多くの研究がそれを証明しているのである。
子どものころから高所得の家庭で生まれて、よりよい教育(私立小学校・国立小学校、通塾、私立小学校、習い事等)を受けると、その分学力や、教養、つまりしぐさとか、礼儀とか、言葉遣いとか(それをフランスの社会学者ブルデューは文化資本と読んだのだが)そういった恩恵を受け継ぐ。その結果よい大学にうかり、またその教養などの文化資本をもとに就活で成功し、より社会的地位が高い職業につく。
子どものころに投資された人的資本は、家庭の文化資本と相まって、社会に出た際に経済資本に変換されるのである。
そしてその子どもにこの経済資本と文化資本は受け継がれ、社会階層の再生産をしていくのである。
小難しいけど、要は学校は社会を平等にする装置で、そんなかでちゃんと然るべき努力すれば、みんなやればできる、YDKな社会だ!というよく公立の中学校教師が言うような主張に対して、「いや、世の中金だろ。現実見ろよ」という話である。(かなりかいつまむと。)
話を戻そう。
話を戻そう。
「ICU生はお金持ちの息子、娘ばかりだ」について考えてみる。
仮にこれが正しいのだとすると、ICU生の親は、ICUより、もしくは同程度高学歴で(一応早慶上智ICUと言われている)、高所得層であると思われる。(階級の再生産)
また、親の教育期待も高く、その子息には、一般的な教育以上の教育を受けさせたいと思っていて、例えば私立小学校、中学校、高校にいれたり、中高一貫校の小学校に入れたりさせているのだろうと推測できる。(親の所得+教育期待)
そこで、以下のような仮説を立てることができそうだ。すなわち
・ICU生の親は、ICUと同程度、もしくはそれ以上の学歴の人が多い(階層の再生産)
・ICU生は、公立小学校、公立中学校に行っている人が少なく、逆に私立小学校、私立中学校、私立高校に通わせている場合が多い(親の所得+親の教育期待)
ということで、これを検証しようと思ったので、調査計画を立てていたのだが
これはちゃんとサンプリングしようと思っても、無理ゲーだということに気付いてしまった。
なんせ、新年めでたい時期の1月2日に課題でもなく自主的にやっている気持ち悪いアンケートに答えてくれる友人はいないであろうし、僕は基本的に大学内ではぼっち飯+図書館引きこもりという、社会関係資本低めのアカデミックキモオタなので、かなり多く見積もっても50人程度しかサンプルとれないだろう。サンプル数そんなに取れないだろうから層化抽出法でも使ってみようと思ったので、母集団(ICU生すべて)の特徴を調べようと思ったがICUのホームページに行くと、どの入試で誰が受かっていているかのデータもない。
しかも年始で出会う方法と言えば、調査者のバイアスかかりまくりな方法(私の友達にLineでGoogle FormsのURLを送りまくって拡散してもらったり、Twitter、FacebookでURL拡散してもらったり)という、もはや科学とは程遠いサンプリング手法を使うからだ。
なのでいっそもう開き直って、テレビ番組のアンケート的おおざっぱなサンプリングのノリで、「そこまで厳密じゃなくても、とりあえず僕の周りだけ偏った人(借金抱えまくってる家で、公立校から地道に勉強しまくって、貸与の奨学金多額に利用してICU入りましたみたいな人)ばかりではないでしょう」と仮定して、サンプリングしてみた。(なのでこれは推測統計に似た記述統計にしか過ぎません。)
サンプリング方法は以下の通りだ。
*Twitter/Facebook/Lineを使って、友人経由でGoogle FormのURLを広めてもらう。
*『ICU生のトラッキング調査』というGoogle Formを、対象者を限定したうえで記入してもらう。
*実施日は1月1日深夜から1月3日12時まで。申し遅れましたがあけましておめでとう。
*下記が実際のアンケートフォーム。
https://docs.google.com/forms/d/12Os8VmOm_8cmLOx2GIE8SbABVLF8F5OJL5j4C4KYHI/viewform
*好奇心を抑えきれず社会調査をやる時の鉄則パイロット調査もしないで、すぐにアンケートを配布したので、何個か問題があった。
*まず一つ。奨学金を二つ別に受け取っている人を想定していなかったので、今回はどちらか一つを選んでもらった。
*センター利用に関しても考慮を入れていなかったため、今回は一般入試としていれてもらった。
*サンプル数はご協力のおかげで90回答を得られた。みんなこんなキモオタの趣味に付き合ってくれてありがとう。
*ICU全体人数が、2613人として、そのうちの90回答なので、ICU生の約3%の人が答えてくれた計算になる。母集団反映できているかは極めて怪しいけど。
結果
結果は以下のようなものだった。
1. ICUの入試スタイル
ICUは一般入試が約6割、推薦入試が約4割だった。
もちろん母集団とのずれはあるだろうが、ICUの入試情報を見ても、実際に4割近くは推薦で入っているようなので、母集団と大きな誤差はないだろうと推測できる。他大と比較して検討することが難しいが、それでもこの数字は推薦生が多いことを示している。
2. あなたの通っていた小学校は
受験せずにそのままあがる公立小学校出身の人が約8.5割、他私立小学校出身が1.5割であった。
日本全国から入学してきているので、おそらく地方だと私立小学校や国立小学校は少ないことが原因として推測できる。小学校の時点では、そこまで子どもにたいして教育投資を学校にかけていないことが分かった。習い事とかさせているんだろうけど。
3. あなたの中学校は
今回の調査で一番面白かったのはこの集計結果であった。
一般的な受験なしの公立中学校出身者は51%、私立中学校出身者は42%、受験が必要な国公立中学校出身者は4%で、過半数がなんらかの私立中学校、受験が必要な国立公立中学校出身だということが分かった。
この結果は仮説通りで、中学校で教育投資をしている人が多いことが分かった。(多分入試のために受験勉強とかしているだろうし。)
4. あなたの通っていた高校は
私立高校が約6割、国公立高校は約4割と、やや私立高校出身者が多いことが分かった。
やはり、裕福な家庭が多いのであろうか。
5. 父親(母親)より私の学歴のほうが
父親(母親)よりも学歴が上がったと答えた人の割合が予想を裏回って6割近く、同程度もしくは下がったと感じている人の割合が約4割であった。
意外にも、ICUでは、階層の再生産というよりも、学歴上昇=社会移動が行われているのではないかと推測できる。だがここで問題なのは、低所得層から高所得層への社会移動ではなく、高所得層からさらなる高所得層への社会移動なのかもしれないので、さらなる調査が必要である。多分やんないけど。
6. 奨学金の利用について
奨学金利用者の割合が約2割、非利用者が約8割と、意外にも奨学金利用者自体が少ない。
もし社会移動のために使用されたとなると、奨学金は一定の役割を果たしているということができるので、次に解析したいと思う。まあ多分やんないけど。
さて、ここまで分析してきたので、今度はもっとクロス集計して細かく分析してみようと思う。これにより、さらにトラッキングが分かりやすくなると思われる。
2-1 通っていた高校と入試スタイル
私立高校から一般入試、公立・国公立高校から一般入試がともに30%で、次いで私立高校の指定校推薦が10%、私立高校のAO入試が9%である。
2-1 通っていた高校と入試スタイル
私立高校から一般入試、公立・国公立高校から一般入試がともに30%で、次いで私立高校の指定校推薦が10%、私立高校のAO入試が9%である。
全体から見ると、私立高校からの推薦入試が公立高校からの推薦入試より多いことが分かった。AO入試や指定校推薦は、受験的学力よりも、学校との親和性や、人間力が試されるものであり、これは東京大学院教授本田由紀が、学力+努力を超えた(Hyper)なメリトクラシー、すなはちハイパーメリトクラシー社会の縮図なのではないかとも考察できる。
2-2 通っていた中学校と高校
これも今回データをとっていて、面白いなと思ったところだ。
ICU生のメジャーなトラッキングルートは、私立中学校から私立高校が40%、公立中学校から公立高校が34%、公立中学校から私立高校が17%であった。なんと40%が私立中学校から私立高校へ進学しているのだ。
教育への投資が半端ないのである。なんせ中学校から大学まですべて私立なのである。THE ペアレントクラシーといった感じである。
2-3 奨学金利用者の分布
国公立高校出身の人が奨学金を多く使っているようだ。
2-4 奨学金利用者と親学歴との比較
奨学金利用者と被用者の間で、親学歴とあまり大きな差がなかった。奨学金を利用することで実際に社会移動を促しているかを考えると、謎である。ただ一方で、事実として、奨学金利用者の60%が親学歴よりも高いと感じていることから、奨学金が社会移動に貢献しているのかという仮説を立てられる。今後の調査が必要だ。やんないけど。
仮説との比較
・ICU生は、公立小学校、公立中学校に行っている人が少なく、逆に私立小学校、私立中学校、私立高校に通わせている場合が多い(親の教育期待)
2-2 通っていた中学校と高校
これも今回データをとっていて、面白いなと思ったところだ。
ICU生のメジャーなトラッキングルートは、私立中学校から私立高校が40%、公立中学校から公立高校が34%、公立中学校から私立高校が17%であった。なんと40%が私立中学校から私立高校へ進学しているのだ。
教育への投資が半端ないのである。なんせ中学校から大学まですべて私立なのである。THE ペアレントクラシーといった感じである。
2-3 奨学金利用者の分布
国公立高校出身の人が奨学金を多く使っているようだ。
2-4 奨学金利用者と親学歴との比較
奨学金利用者と被用者の間で、親学歴とあまり大きな差がなかった。奨学金を利用することで実際に社会移動を促しているかを考えると、謎である。ただ一方で、事実として、奨学金利用者の60%が親学歴よりも高いと感じていることから、奨学金が社会移動に貢献しているのかという仮説を立てられる。今後の調査が必要だ。やんないけど。
調査のまとめ
今回調査で分かったことで面白かったところの要点。これを母集団全体であるICU全体を説明するのはできないかもしれないけど
□ ICUは推薦生が4割!
□ ICUは推薦生が4割!
□ ICU生の約半数が私立中学校出身!
□ ICU生の4割が中学、高校ともに私立出身
□ ICU入学のマジョリティーのルートは、私立公立ともに一般入試、次に私立指定校推薦、次に私立AO入試
□ ICU生の6割が親学歴より高いと回答!
仮説との比較
・ICU生の親は、ICUと同程度、もしくはそれ以上の学歴の人が多い(親の所得)
→そうでもない。むしろ、親より学歴上がっている人の方が多かった。
・ICU生は、公立小学校、公立中学校に行っている人が少なく、逆に私立小学校、私立中学校、私立高校に通わせている場合が多い(親の教育期待)
→仮説通り。私立中学校出身多すぎてワロタ。
それで、思ったことをつらつらと。
ICUの経営戦略として、割と高所得層かつ高文化資本の私立高校から、指定校推薦とかAOで囲い込んでるのかもしれない。安定して高い学費を払える人をノーリスクで集められるだろうし、合理的だなと。その辺私立高校の経営とか、進学塾の経営とかと似ているな。成績優秀な高所得層を囲い込んでるとことか。
それにしても私立中学出身の人多い。中高大とどれだけ学費をかけているのだろう。
まさにペアレントクラシーという感じである。
まさにペアレントクラシーという感じである。
あと、ICUみたいな私立大学ならいいけど、今後大学改革でより、国公立大学でさえも人間力のようなハイパーメリトクラティックな能力が選抜の評価基準となるとき、より露骨に高所得層の人間以外がフィルタリングされていく社会になり、平等社会に見えて超絶金がものを言う社会になっていき、さらに格差が拡大するんだろうなーなんて思った。機会の平等の観点で、難しそうである。
格差是正のためには目の前の格差を隠蔽するのではなく、明るみに出して、社会移動に対してある程度大学評価に報酬を与えたらいーんじゃないかななんて思った。
調査結果後のフィードバック
* 父親学歴・母親学歴を別々に聞いていないため、階層移動しているかどうかは判断しかねない。女性の大学進出はさかんになっている時期であり、父親学歴のみで把握はできないかもしれない。⇒その通りでした。サンプルの段階で問題があったので、今後改善していこうと思います。
* 父親学歴・母親学歴を別々に聞いていないため、階層移動しているかどうかは判断しかねない。女性の大学進出はさかんになっている時期であり、父親学歴のみで把握はできないかもしれない。⇒その通りでした。サンプルの段階で問題があったので、今後改善していこうと思います。
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