教育学全般の面白い研究まとめてみたよ!
・ いままさに卒論を書いている人で、参考文献を探している人
・ 教育学全般に興味がある人
にとって特に読んでほしいです。心理、社会、経済領域のトピックを集めました。
にとって特に読んでほしいです。心理、社会、経済領域のトピックを集めました。
内容
研究名と、(1) 要約と、(2) 面白いところ (3) 資料のリンクを貼っておきます。
深い内容については、関連資料のリンクをたどってみてください。
なるべく有名な研究は一次資料に当たれるようにします。
深い内容については、関連資料のリンクをたどってみてください。
なるべく有名な研究は一次資料に当たれるようにします。
目次
- どんな教育が成功を規定するか (教育社会学、教育経済学)
- マシュマロテスト
- ペリー幼稚園プログラム
- GRIT
- スガタミトラの自己学習
- 教育格差(学歴、地域、所得格差等)
- 都市部の通塾格差(地域格差)
- 東大生の親の年収(所得格差)
- ハーバード大学生の親の年収(所得格差)
- 学力以外でも現れる、学力+αの格差(ハイパーメリトクラシー)
- 動機づけ(モチベーション)研究
- Skinnerによるオペラント条件付け
- Deciによる内発的動機付け
さて、ここでは、どのような教育が人を成功に導くのか(収入、健康面等)については、いろいろな議論があります。特に有名な教育実験をまとめました。
マシュマロテスト
被験者である子どもは、気が散るようなものが何もない机と椅子だけの部屋に通され、椅子に座るよう言われる。机の上には皿があり、マシュマロが一個載っている。実験者は「私はちょっと用がある。それはキミにあげるけど、私が戻ってくるまで15分の間食べるのを我慢してたら、マシュマロをもうひとつあげる。私がいない間にそれを食べたら、ふたつ目はなしだよ」と言って部屋を出ていく。
その結果、マシュマロを食べなかった子どもと食べた子どもをグループにした場合、マシュマロを食べなかったグループが周囲からより優秀と評価されていること、さらに両グループ間では、大学進学適性試験(SAT)の点数には、トータル・スコアで平均210ポイントの相違が認められるというものであった。ウォルター・ミシェルはこの実験から、幼児期においてはIQより、自制心の強さのほうが将来のSATの点数にはるかに大きく影響すると結論した。2011年にはさらに追跡調査が行われ、この傾向が生涯のずっと後まで継続していることが明らかにされた。
幼少期の一時点と、成人後の横断調査の研究として有名です。
ちゃんと我慢できる子どもは、あとからの伸びしろがあるってことですね。
これが遺伝的要因のみに制約されるのか、それとも環境要因で伸ばせるのか、気になります。
ペリー幼稚園プログラム
プログラムに登録された123人の子ども達は、年齢が3、4歳、IQは70~85、アフリカ系アメリカ人で、貧困層に属していた。プログラムでは教師一人に対する児童数の比率を低くし、2時間半の授業を毎日提供して、毎週家庭訪問を行った。研究者は、このようなプログラムに登録されなかった同じ様な子ども達と比較することによって、成果を測定しようとした。
統制群と比較してみると、プログラムの卒業者は学校中退や留年、特殊学級への参加が少なかった。成人初期までに、多くが大学に入り、さらに多くが雇用された。犯罪を起こしたり、生活保護を受けたり、麻薬を使ったりする人数も少なかった。結果として、プログラムの初期コストは多額だが、投資した1ドル毎に約9ドルも生み出すほど最終的な利益は十分に高かった。
この実験が二つの視点から見ると面白いです。
まず、幼児教育の視点。幼少期のみ、この実験は介入していますが、長期的な効用をもたらしました。幼児教育の重要性が示唆されますね。
もうひとつの視点が、教育は遺伝か環境か。という議論です。
よく、知能は遺伝するといわれますが、遺伝要因ではなく、環境要因で学力効果を上げることを示した研究ですね。
以前にもこちらの記事で、詳細についてご紹介しましたので、のちほど是非読んでみてください。
GRIT やりぬく力
定義については、日本語のものが見当たらなかったので、英語のものを用意しました。GRITは「長期的な目標のための忍耐と情熱」と定義されます。GRITと成功の関係性について、広く研究されています。
以前にもこちらの記事で、詳細についてご紹介しました。人生に成功している人の特徴は何かを調査した研究です。
ブログ記事:【成功にIQは関係ない ー成功のカギは「やり抜く力」だったー】 『やり抜く力(アンジェラ・ダックワース)』を読んでみました。
以下のスケールはGRIDスコア(やりぬく力スコア)と呼ばれています。
1. 新しいアイデアやプロジェクトとが出来ると、ついそちらに気を取られてしまう。
2. 私は挫折をしてもめげない。簡単にはあきらめない。
3. 目標を設定しても、すぐ別の目標に乗り越えることが多い。
4. 私は努力家だ。
5. 達成まで何か月もかかることに、ずっと集中して取り組むことがなかなかできない。
6. 一度始めたことは必ずやり遂げる。
7. 興味の対象が毎年のように変わる。
8. 私は勤勉だ。絶対にあきらめない。
9. アイディアやプロジェクトに夢中になっても、すぐに興味を失ってしまうことがある。
10. 重要な課題を克服するために、挫折を乗り越えた経験がある。
成功者であればあるほど、このグリットスコアが高いようです。
結局、グリーンベレーの訓練に残った人も、営業力が高い人も、高校を卒業できた人も、みな「粘り強く頑張る力」と「特定の目標に粘り強く努力する意志力」、つまりやり抜く力が一番関係していた
自己学習について(スガタミトラ)
まったく英語を使えない子どもたちがいる村に、インターネットがつながったパソコンを放置したら、勝手にインターネットを使って英語を話せるようになっていたという研究です。一番面白かったですね。
26人の子どもたちを集めました そこでこう話したのです 「とても難しい内容だよ 誰も理解できなくても驚かないよ すべて英語だし」 そう言って立ち去りました (笑) コンピューターを子どもたちに残して 2カ月後に戻って・・・(中略) 「何か分かった?」と聞いたら「なんにも」というのです ・・・・(中略)「2カ月見て何も?」と聞いたら 12歳の少女が手を挙げて 実際にこう言いました 「DNA分子の不適切な複製で遺伝子疾患が起きる ということ以外は 何も分からないの 会場(笑)」
教育格差(学歴、地域、所得格差等)
親の教育期待と学力格差について
御茶ノ水大学の親の社会階層と、子供の学力を比較した耳塚教授の研究です。
親の学歴、教育支出と、学力の関係について調べた記事です。
御茶ノ水大学21世紀COEプログラム(誕生から死までの人間発達科学)では、JELS(Japan Education Longi-tudinal Study)という大規模調査を実施しました。人口約25万人の関東地方の中都市などをフィールドとして、小学校3、6年生、中学校3年生、高校3年生の計8000人強とその保護者を対象に、03年から04年にかけて実施した調査です。家庭の経済的・文化的環境として父親の職業や母親の学歴などの要因を設定した上で、子どもの学力を規定する要因の分析を行いました。その結果、例えば関東地方中都市の小学校6年生の算数学力の場合、(1)学校外教育費支出(学習塾、稽古ごと、通信教育などに支出する教育費)、調査対象となった子ども1人の1か月支出額、(2)保護者学歴期待──どの段階までの学歴を子どもに期待するか、(3)世帯所得──家族全体の税込み年収が関係していることがわかりました。
親が子供に勉強するように期待すればするほど、子供の学力が上がるみたいです。いかに子供の成長にとって、親の関心が必要かがわかりますね。同時に、生まれが能力を規定する、根拠になると思います。
東大生の親の年収
武蔵野大学の舞田講師が、ブログで公開しているデータです。一般的な大学生と東大生の親の年収分布を比較しています。
東大生の6割ほどが,年収950万以上の家庭の子弟ということです。この層は,大学生くらいの子がいるとみられる世帯全体(一般群)では2割ほどしかいないことを考えると,かなりの偏りといえます。右端の倍率から,この層から東大生が出る確率は通常よりも2.6倍高いことも知られます。
一般入試は公平な入試とはいわれていますが、このデータをみると本当に公平なのでしょうか。疑問です。一般入試でも、結局平等のベールをかぶっているだけなのではないでしょうか。
引用元)データえっせい http://tmaita77.blogspot.jp/2015/02/blog-post_2.html
ハーバード大学生の親の年収分布
これも以前僕のブログ記事で紹介したのですが、ハーバード大学生にcrimson.comのアンケート調査で親の年収を調べてみたみたいなのですが。
ブログ記事: 東大もハーバードも、結局金持ちばっかだね
東大生の親の年収1250万円以上の割合が、23.2%。一方で、ハーバード生は1375万円以上世帯から52%だった。
ですって。東大よりもはるかにやばそうwwww
学力以外でも現れる、学力+αの格差
教育社会学の第一人者、刈谷先生の研究です。著書『学力と階層』に書いてあります。
総合の授業中に積極的にリーダーシップをとる人がどんな人かを調査した結果ですが、
総合の学習の時間にまとめ役になるかどうか」を階層ごとに集計した結果、階層上位ほどよくあてはまると回答していた。生まれが学力のみならず、学校の中でのリーダーシップにも影響する。
らしいです。これって、もう子供だけの努力じゃどうにもならないですよね。親の学歴によって、授業でのリーダーシップにまで影響が出てしまうんですから。
ブログ記事: 『学力と階層(刈谷剛彦)』読んでみました。
動機づけ(モチベーション)研究
スキナーによる外発的動機付け
人のモチベーションを説明するモデルとして、一番有名なのが外発的動機付けです。
外発的動機づけは、『報酬と罰(飴と鞭)』によって行動の生起を変容させる『オペラント条件付け(道具的条件付け)』の原理で説明することが可能である。
これだけだとなにいっているかわからないですね。スキナーはこんな実験をしました。
スキナー箱の中にはレバーがあり、
押すとえさ(報酬)が出てくる仕掛けになっています。
ネズミはレバーを押す(行動)とえさが出ることは知らないため、
空腹のままうろうろしますが、そのうち偶然レバーをさわって
えさを得ることがあります。
おく何回か偶然が重なるうち、レバーを押せば(行動)エサがもらえる(報酬)
ということを学習します。
レバー押しに対してエサを与えることが「強化」であり、
報酬であるえさが「強化子」です。
このように、条件付けがなされていくわけです。
引用元) http://psychoterm.jp/basic/learning/02.html
つまり、レバーを押すモチベーションを、餌を与えることであげているわけです。この場合は、報酬で「レバーを押す」という行動を起こさせているわけですね。
ほかにも、例えばごみを出したら罰金というのも、罰金という罰でごみを出すという行動を抑制しているといえます。
よく言われていますが、外発的動機付けのよくないところは、報酬・罰がなくなるとその行動がとまってしまうということです。受験勉強とかそうですよね。「いい学歴がほしいから勉強する」だと、学歴が手に入ってから勉強しなくなってしまいますよね。
Deciによる内発的動機付け
さて、今ご紹介した外発的動機付けですが、実は逆の動機付けの方法があります。内発的動機付けです。
20世紀前半は、報酬をもらうことでモチベーションを上げるというスキナー(Skinner,B.F.)らが提唱していた行動主義が全盛期でした。しかし当時、大学院生の心理学者デシは、、好奇心旺盛な幼児が小学校に上がるとそういった好奇心が急激に下るのはなぜなのか?疑問に思ったと言います。
やがて、その原因はスキナーらが提唱していた行動主義に反して、子供に上げる報酬にあるのではないかと考えました。その後、心理学実験によって実証します。スキナーらの、外発的動機づけに対し、内発的動機づけを提唱しました。
モチベーションを高める内発的動機づけには、3つの人間のもつ基本的な欲求が影響しています。
有能性(competence)の欲求
自律性(self-determination)の欲求
関係性(relatedness)の欲求
デシの実験では、子供にパズルを完成させるように指示しました。もともと楽しんでパズルを完成させた生徒たちの一部に、報酬を与えた結果、報酬を与えられなかった生徒と比べて、意欲が下がったようです。
自分の中に、行動を起こさせるもの(有能性、自立性、関係性)があれば、その行動は自分でコントロールできますね。逆に外部の報酬に頼ると、報酬がなくなったとき、その行動はとまってしまう可能性があります。教育者は、内発的に動機付けていくことが大事ですね。
参考
日本語wiki
英語wiki
論文(英語)
【やりぬく力】
英語wiki
英語wiki
【ペリー幼稚園プロジェクト】
日本語wiki
日本語wiki
英語wiki
論文