年収は住むところによって決まる エンリコ・モレッティ
タイトルにつられてぶ厚かったですが読んでしまいました汗
「何言うとんねん!年収がいいから住むところが決まるねん」と思った僕は、完全につられてしまいましたね。タイトルのつけ方がうまい。
なぜ特定のエリアに雇用が集中して平均賃金が上がるのか。
本書ではこれを「イノベーション産業の乗数効果」で説明している。
イノベーション系の仕事1件に対し、地元のサービス業の雇用が5件増えるというのだ。
この乗数効果は製造業の2倍。ゆえに富める都市はさらに富み、沈める都市はどんどん沈む。
記事全体の主張としては、
・アメリカの製造業は衰退し、イノベーション産業が発展してきた
・イノベーション産業が発展している地域には、高学歴、高所得の人たちが集まる
・すると彼らを支えるインフラ業の需要が高まり、乗数効果で高所得者以外の給与や教育サービスが向上する
という内容でした。特に読んでて面白かった研究まとめておきます。詳しい研究のソースとかは書かないでおくので、実際に買って読んでみてください!Kindleであるので!
ハイテク産業で1件雇用が生まれると、その他のサービス関連の新規雇用が5件生まれる
タイトルの通りですが、面白いなぁ。
ハイテク産業で新たに一件の雇用が生まれると、その地域でサービス関連の新規雇用がなんと五件も生み出される。これに対して、伝統的な製造業の場合には、一件の雇用増が生み出す新規雇用は一・六件にすぎない。
高学歴・高技術者が地域に増えると、それ以外の人たちも得する
「ある人がどの程度の教育を受けているかは、その人自身が得る給料の額だけでなく、その人の暮らす地域全体にも影響を及ぼすのである」
教育レベルの高い住民が多いと、地域経済のあり方が根本から変わる。住民が就くことのできる仕事の種類が増え、労働者全体の生産性も向上する。その結果、高学歴の働き手だけでなく、学歴の低い人の給料も高くなる。
大卒者の割合が10%増えると、その都市で働く高卒者の年収は7%増えるのだ
大卒者の割合が増えている都市の住民は、その割合が伸び悩んでいる都市の住民に比べて、給料が速いペースで上昇する傾向が見られた。
私の研究によれば、地元に大学があれば、概して労働力の教育レベルが高まり、地域の賃金水準も向上する。
人材の価値が、何よりも大事になってきた
Facebookがある会社を買収したけど、目的は会社ではなくたった一人の人物だったというトンデモエピソード!すげぇ
(Facebookは)ドロップioを買収した途端に、会社を畳んでしまったのだ。フェイスブックが欲しかったのは、サム・レッシンという人材だったのである。こうしたパターンがシリコンバレーで見られるようになっている。新興企業の新しいテクノロジーではなく、それを生み出した人材を目当てに、大企業が新興企業をまるごと買収するケースが出てきたのだ。
フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOは当時述べている。「本当に飛び抜けた人材は、まずまず優秀な人材より少し優れているという程度ではない。100倍は優れている
なんでフェイスブックはこんなにお金をかけたのか。モレッティ先生いわく
人材の質に左右されるようになったからだ。二〇世紀の企業間の競争は、基本的に生産設備などの物的資本の獲得合戦だった。しかし今日、競争の帰趨は、優れた人的資本の持ち主をどれだけ引きつけられるかで決まるようになった。新しいアイデアに対する経済的見返りが大きくなれば、優れたアイデアを生み出せる人物の価値も高まるのが当然だ
つまり製造拠点はアウトソースできるから、質の高い頭脳をどれだけ集積できるかというところが問題らしい。
Microsoftがシアトルに本社を移転すると、シアトルの大卒割合が倍増する
マイクロソフトがシアトルに本社を置く前までは、雇用も失業率もどんどん低下しているオワコンシティだったのですが・・・
この当時、ソフトウェア企業にとってシアトルに本社を置くというのは、とうてい常識的な選択ではなかった。むしろ、最悪に近い選択に思えた。それくらいシアトルは苦しい状況に置かれていた。アメリカ北西部の太平洋岸に位置する都市の多くがそうだったように、雇用が年々減少し、高い失業率に悩まされ、未来への明るい展望を見いだせずにいた。シリコンバレーより、いまのデトロイトに近い状況だった
マイクロソフトにオフィスを移転すると、それに関する多くの企業が移転してきて、また人が増えるとサービス需要が増え、町が発展したみたいです。その結果大卒率が爆増!
シアトルでハイテク産業が飛躍的に成長した結果、大卒者が人口に占める割合の差は、1990年には14%、2000年には35%、そして現在はなんと45%に拡大している
そして、マイクロソフトが移転してこなかった、当初同じくらいの発展度の州と比較すると、その差はどんどん広がっていったみたいですね。
町の暮らしやすさや文化施設の水準にはじまり、学校の質や食生活のレベルにいたるまで、市民生活のあらゆる側面で明暗が大きくわかれていった
さらに、マイクロソフトはその周辺の雇用も生み出します。
マイクロソフトがシアトルの労働市場に及ぼしている最も大きな好影響は、ハイテク産業以外の雇用に関わるものだ。私の推計によれば、マイクロソフトが乗数効果を通じて地元に生み出している雇用は、高度な教育を受けていない人でも就けるサービス業の雇用(清掃員、タクシー運転手、不動産業者の社員、大工、零細企業オーナーなど)が一二万、大学卒・大学院卒の人向けの雇用(教師、看護師、医師、建築家など)が八万にのぼる
会社一個立てるだけでこんなインパクトあるなんて!うちの横にマイクロソフトたててください(懇願)
カレッジ・プレミアム(大学教育の収益率)がどんどん上がってる
USだと、大学に行くのと、高卒なので、得られる賃金の差がどんどん広がっているらしいですね。
カレッジ・プレミアム(大卒者が高卒者よりどれくらい多くの賃金を得ているかという比率)だ。これは、典型的な高技能労働者と典型的な非高技能労働者の賃金の差を映し出す数字と言える。アメリカの労働市場のカレッジ・プレミアムは、1980年には31%だったが、その後は毎年上昇し続け、いまでは1980年の2倍以上に拡大している
大卒の親は、子供に有利な環境を用意している
大卒親は高卒親よりも
・シングルマザー率が低く
・夫の潜在的所得が高く
・妊娠中に喫煙する割合が低く
・早産、低体重児の出産も少ない
らしいです。結構残酷な事実ですね。
ジャネット・カリーと私が二〇〇万人以上の母親の代表標本調査をおこなったところ、教育レベルの高い母親ほど、シングルマザーでない確率が高かった[10]。大学卒の母親の97%は出産時に結婚していたが、高校中退の母親のうち出産時に結婚していた人は七二%にとどまっている。また、結婚している母親の場合、概して大卒者のほうが高校中退者より夫の潜在的所得が高い。
妊娠中に喫煙した母親の割合は大卒者では二%だったのに対し、高卒者では一七%、高校中退者では三四%にのぼった。早産したり、低体重児を出産したりする割合も、大卒者の母親は非大卒者の母親よりずっと少ない(早産と低体重出産の子どもは、のちに深刻な健康上の問題を生じる確率が高い)
アメリカのイノベーション産業を支えているのは移民。日本はその意味でオワコン
移民は特許取得数が多く、大きくイノベーションに貢献しているだとか
過去六〇年間のアメリカの州ごとの特許創出件数と、高技能移民の流入状況の関連を慎重に分析した[17]。それによると、大学卒の移民の割合がとくに増えている州は、特許の創出件数もとりわけ大きく伸びていた
アメリカで活動している外国生まれの科学者は、アメリカ生まれの科学者に比べて、ノーベル賞を受賞する確率が二倍以上も高いのだ
アメリカは幸い移民の国で、海外から優秀な移民を受け入れられたのでイノベーションが加速したけど、日本はその意味でオワコンだったらしい。
アメリカは世界の国々から最高レベルのソフトウェアエンジニアを引き寄せてきたのと異なり、日本では法的・文化的・言語的障壁により、外国からの人的資本の流入が妨げられてきた。その結果、日本はいくつかの成長著しいハイテク産業で世界のトップから滑り落ちてしまった
本筋は教育の話ではなく、都市経済学の話なのですが、教育に興味あるのでどうしてもここばかりに目が行きます。もっと詳しく見てみたい方は、下にアマゾンの説明ページ乗っけておいたので、ぜひ読んでみてください!
Kindleもありましたので、通勤のスマホからでもさくっと読めます!
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